こんにちは。ライター/ライフカウンセラーの、山﨑です。
普段は執筆活動のほか、心理学の理論や、傾聴カウンセリング・コーチングなどのスキルを活かし、一人ひとりが自分らしく、満ち足りた心で充実した日々を送るためのサポートをしています。
さて、私は幼少期から繊細で敏感な、いわゆる「HSP」の気質が強く、それが日常生活上での悩みの種になることが多くありました。
HSP。最近では多くの人に知れ渡る言葉となりましたが、私が子どもの頃はそのような定義は存在しなかったように思います。
「自分の苦しさ・つらさはどこからきているんだろう…?」と一人で抱え込み、実際にメンタルダウンや体調不良につながったことも…。
ですが、そんな私も試行錯誤を繰り返しながら「自分なりの楽に生きる方法」を模索し、いまの仕事やライフスタイル(フリーランスで働く、自然に囲まれて暮らす…など)にたどりついています。
決して自分の気質が変わったわけではありませんが、年を追うごとに少しずつ、自分を解放して生きられるようになっている実感はあります。
これまでの経験や人生を振り返って思うのは、「たとえ敏感で繊細であっても、自分らしく幸せに生きることはできる」ということ。
ただし、いろんなことに敏感に反応してしまうからこそ、自分の内側から湧き出てくるもの、本当の自分の気持ちや感覚を大事にして生きることが、とても大事だとも考えています。
この記事では、私自身がどのようにHSPと向き合ってきたのかに触れながら、同じように敏感で繊細なタイプの人が少しでも生きやすくなるために、ぜひお伝えしたいことをまとめます。
「HSPに悩む人は意外と多い」とは言うけれど…
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)は、「生まれつき、非常に感受性が強く敏感な気質をもった人」を指す言葉です。
視覚や聴覚などの感覚が過敏で、周囲の刺激に強く反応する。情報を読み取る力が強く、物事の一つひとつを非常に深く考える。人の気持ちに共感しやすく、場の雰囲気や空気なども敏感に察知する。
などなど、HSPの人は自分の中に「非常に感度の高いセンサー」を持っています。そのため、HSPでない人よりも、ただ生きていくだけで疲れやすい…というわけです。
ちなみにこのHSP、統計的には人口の15~20%くらいが該当するそう。
この数字だけ見ると、決して珍しいわけではないようにも思いますし、最近はHSPを励ます文脈で「あなただけじゃない!大丈夫!」と語られることも増えてきました。
たしかに、HSPという概念が世間に知れ渡り、「他にもHSP仲間がいる!」と思えることは、苦しい思いを抱えている人にとって救いになる面もあると思います。
ですが、同時に「当事者」の私がいつも感じてしまうのは、「5人に1人はHSP。あなただけじゃないから安心して!」と言われても、あまりうれしい気持ちにはならないということ。
むしろ「そんなにいるなら気にするほどでもないよ!(気にしすぎ!)」と暗に言われているような気がしてしまいます(これもまた、深く考えすぎでしょうか…)。
HSPの人がどれだけたくさんいようと、私が「つらい」と感じるのは事実。
そして、感じる「つらさ」は、みんな違う。
その「つらさ」は他人と比較できるものではありませんし、本来、比較をしてはいけないのですよね。
同じケガをしても、痛みの感じ方は一人ひとり異なるのが当たり前。
「私のつらさなんて、他の人に比べたらたいしたことないかも…」と考えてしまうと、気が休まらず、どんどん自分を追い込んでしまいます。
だから、まずは「(他の人は関係なく)自分は苦しいんだ」という気持ちをそのまま自分で受け止めることが、この気質とうまく付き合っていくための基盤となる大事なポイントだと考えています。
私とHSPの付き合いの歴史(幼少期~10代)
ここからは、私自身のことを振り返ってみます。
思えば、幼少期から敏感で繊細なところは、日常生活にあふれ出ていました。
たとえば、小学校低学年くらいの頃の記憶をたどってみると…
- 友達の家のニオイ、友達の服のニオイが気になって気分が悪くなる
- 洋服のタグやセーターがチクチクして耐えられない
- 学校の予防接種で列に並んでいるときから一人ギャン泣きし、医師や教師に呆れられる
- 授業中、自分から手を挙げて発言できず、通知表に「消極的」と書かれる
- 舞台芸術を鑑賞した日に興奮・圧倒されて眠れず、翌日の学校でもどよーんとした気分を引きずる
こういうことはしょっちゅうでしたが、不快な気持ちをうまく処理できず、苦しい思いがありました(基本的に誰にも言えなかったです)。
当時の私は、一貫して「大人しい子」「内向的な子」「神経質な子」の扱いだったのでしょう。
(現代教育は少し変わっているかもしれませんが、昔は「内向的=ダメ」みたいな考え方が強かった印象です)
でも、五感の過敏性や共感性、感受性の強さなどは、まさにHSP的だったなと思います。
正直なところ、当時は教師も親も、こういう特性を根本的には理解してくれていなかったと私は感じています。
HSPという概念が出てくる前に生まれた人たちは、私と同じように、幼少期に苦しんだ経験を持つ人も少なくないのではないでしょうか。
それから大人になるにつれて社会性も身につけていき、さすがに注射で泣くことはなくなりましたし(笑)、もう少し積極的に自分の意見を主張できるようにもなりました。
それでも、やはり根本的な気質は30年くらい経ってもあまり変わっていないな…というのが、正直なところです。
成人後、少しずつ楽になっていったのはなぜか?
HSPは基本的に治るものではありませんが、私がこれまでの人生で、息苦しさを徐々に解放していくきっかけとなった大きな出来事が2つあります。
ひとつは、25歳くらいで実家を出て、ひとり暮らしを始めたこと。
そしてもうひとつは、会社員からフリーランスへ転身したことです。
ひとり暮らしで、ようやく「自由」を感じられるように
私は昔から、親にも気を遣ってしまうところがありました。
それはおそらくHSPの問題だけではなく、そもそもの親との関係性や家庭環境、私自身が身につけた対人関係のクセなど、いろいろな要因も絡んでいるのだとは思います。
だから、決して「家=すべてをさらけ出せる安全な場所」ではなかったのが正直なところです。
高校や大学、社会人になって、外に「自分の世界」ができてくると、趣味の活動やバイトなどに打ち込んで、ちょっとずつ自分らしく生きられるようになってきました。
ですが、毎日過ごす家がどこか落ち着かないというのは、やはり苦痛です。
そこで、25歳のときに多少の親の反対も押し切り、ひとり暮らしをスタート(なぜ家から会社に通えるのにひとり暮らしするのかと言われた)。
それが私が「自由」という気持ちを心から感じられる、おそらく初めてのきっかけになりました。
「誰にも気を遣わず、自分で何事も決められる環境で生活すると、こんなにのびのびといられるんだ…!」
それが、当時抱いた正直な気持ちです。
私には、誰にも気兼ねなくいられる生活環境が必要だったのだと思います。
フリーランスになって生き方そのものが様変わりした
仕事の変化も、私がHSPを抱えながらも自分らしく生きるために、大きな影響を及ぼすきっかけとなりました。
先に簡単に私の職歴を紹介すると、私は会社員として2社を経験し、それからフリーランスになっています。
新卒で入ったのは、歴史ある上場企業で、かなり「縦割り感」の強い会社。先輩に意見を言えるような雰囲気はなく、指示命令体系など、どこか軍隊的なところがありました。
業務も非常に多忙。いろんな人が、あちこちで声を挙げているオフィスの中で、私は常に緊張感MAXの状態でした。
さらに、繁忙期には毎日タクシー帰りなど激務が続き、心も身体も、常に追い込まれるような気分で出社を続けていました。
なんとか頑張っていたものの、そういう環境にいると、どこかで限界がきます。最終的には体調不良になり、休職→退職へ。
そんな出来事を経て、自分には大手の雰囲気は合わなさそうだと感じ、まったく毛色の違う、数十人規模の小さなコンテンツ制作会社へ転職。そこでは編集アシスタントの仕事をしていました。
もともと出版業界を志望していたため、仕事内容そのものは「やりたいこと」でもあって充実していました。
ですが、ワークスタイルが不規則なうえにスピード感が速く、「落ち着いてマイペースで仕事をする」なんていう環境とはかけ離れています。
体力も精神力も、どんどん削られました。
「このまま何年も働くのは無理。でも、似たような業界で別の会社に転職してもまた同じことになりそう…」
そんな気持ちになり、どうにかやりたいことで、もっと無理なく働く方法を考え、フリーランスのライターになったという経緯です。
もちろん、最初からフリーランスの仕事がうまくいったわけではありません。会社員時代の経験を活かせるとはいえ、いきなり一人で生活費をまかなえるほど収入を得るのは大変でした。
実際、最初の1~2年はアルバイトと並行し、地道に営業活動をしながら経験を積み、実績を増やして仕事を拡大させていきました。
収入面では苦しかったですが、これも生活スタイルと一緒で「誰にも気を遣わずに自分で決めて行動できること」が非常に心地よかったです。
「求めていたのはこの働き方だ」という気持ちに自然となれたからこそ、10年以上も続けてこられたのだと思っています。
敏感さと繊細さを発揮できる生き方をする
HSPは生まれ持った気質なので、基本的に「治す」ことは難しいといわれています。
実際、いまでも私はすぐに疲れてしまいますし、人が多い場所は苦手。刺激を受けて感情が高ぶると、すぐ眠れなくなる…。
そんな敏感さや繊細さに苦しめられることは、しょっちゅうです。
ただ、人生を重ねる中で「このHSPの気質は役立っているかも…」と感じることが、実は結構あります。
- 先々のいろいろなリスクに気づけるので、チャレンジするときにも大きな失敗をしづらい
- 相手の気持ちや状況を察知でき、「相手が何を求めているか」を理解したうえで行動できる
- 自分の感性や洞察力を発揮した、きめ細やかな仕事をクライアントに評価してもらえる(ライターとして)
- 相談者さんに寄り添うことにやりがいを感じられる。深い心の繋がりを築くことで、自分自身も癒される。(カウンセラーとして)
会社勤めをしていたときは、こういった特性を活かしきれず、むしろ環境への適応面などで苦しさを感じるほうが多かったです。
でも、いまは自分のペースで、深く深く考えて仕事をしながら「自分にしかできないもの」を作りあげていく。自分のペースで無理なく人付き合いをする。
そんなやり方をしても、誰かに文句を言われることはありません。
同じ「私」という人間でも、身を置く環境や生活スタイルによって過ごしやすさは大きく変わりました。
毎日たくさんの刺激を受け取って、いろいろなことを深く気にしてしまうタイプだからこそ、自分の繊細さや敏感さを活かせる働き方・生き方を選んでいくこと。
そして、人と比べることなく、自分がいろいろな物事に触れるときの「しっくりくる」「なんとなく居心地が悪い」などの素直な感覚や、心が感じる「好き」「嫌い」の純粋な気持ちを大切にすること。
それが、とても大事なのだと実感しています。
HSPの人こそ「自分の感覚・居心地」を何よりも大事にしてほしい
私は「独立し、自由な環境や精神で仕事をしていくこと」が、自分自身の解放につながりました(もちろん100%ではありませんが)。
ただ、誤解のないようにお伝えしたいのは、決して「フリーランスになれば幸せ」ではないということです。
HSPの人でも、全員がフリーランスに向いているわけではありません。
生きてきた環境、価値観、性格は、一人ひとり違います。
どんな働き方や生き方が適しているかも、人それぞれです。
大事なのは、自分にとって本当に無理のない、自分が自分でいられるような生き方を見つけていくこと。
いま、なんとなく毎日が苦しいなと悩んでいる人は、まず「自分がどんな気質や性格、価値観を持った人間であるのか」を知るところからはじめてみてください。
とはいえ、一人で考えていてもよくわからない、これでいいのかと不安になってしまう…。もちろん、そんなときもたくさんあると思います。
また、私もそうでしたが、HSPの人はこの気質を理解されないことが本当につらいのですよね。
ただ、残念ながらHSPの本当の苦しみは、同じHSP気質を持つの人でないとなかなかわかってもらいにくい…と、私は感じています。
ですので、もし悩んでしまうときは、いつでもご相談ください。
あなたの心の奥底にあるものを大事に見つめて、あなたらしく生きるためにどうすればいいか、一緒にゆっくりと考えていきましょう。