
家族みんなで、自然が豊かな田舎で暮らしてみたいな。でも、地方移住ってどんな感じなんだろう。失敗したらイヤだな…。
こんなお悩みに答えます!



私・やまももは今年、30年以上過ごした東京を離れて、長野県松本市へ夫婦で移住しました。
世の中がめまぐるしく変化し、都会一極集中の生活を見直す動きが大きくなっている昨今。
新たなライフスタイルを求めて、地方移住に関心を寄せる人は年々増えているそうです。
私自身も「自分らしい生き方」を実現するために、2020年には長く過ごした東京を離れ、長野県松本市へ夫婦で移住しました。
初めての地方移住にはワクワクと同時に多少の不安がつきものです。せっかく移住にチャレンジするなら失敗や後悔はしたくないなと考えていました。
そんな私が移住先選びで意識したことのひとつが、まず地方都市へ移り住んで現地の生活に慣れ、将来的に、さらに田舎へ移り住む(ことも検討する)「二段階移住」というキーワードです。
「二段階移住」は、これから地方移住を考える人にもおすすめできる考え方なので、今回はこの言葉について深掘りしてご紹介します。



地方移住に漠然と興味がある方、地方移住先をどうやって選ぼうか迷っている方は、ぜひ参考にしてもらえたらと思います。
理想の暮らしは、二段階移住で見つけられるかも


二段階移住とは?
「二段階移住」とは、地方移住をする際に、いきなり都会から田舎へ移るのではなく、まずは地方の都市部に住んでみて、その後、もっと田舎へと二段階にわたって移ることを意味しています。
もともとは高知県が提唱した言葉ですが、最近では高知県以外の地域でも、ムリのない地方移住のカタチとして少しずつ注目されつつあります。
私もそうだったのですが、長いこと都会で暮らしてきた人ほど、いきなりの田舎暮らしには憧れる反面、心配や不安もありますよね。
別記事「田舎の人間関係は本当に怖くてめんどくさい?【結論:住む場所によります】」でも書きましたが、とくに人間関係や、田舎特有の習慣になじめるか不安という声は本当によく聞きます。
だからこそ、まずはお試し的に地方での暮らしを経験し、そこから最終的に移住したい地域をじっくりと考える。
それが、二段階移住のおおまかな内容です。
実際に高知県では二段階移住が行政として「しくみ化」されていて、一段階目となる高知市でのお試し移住費用が最大20万円補助されたり、二段階目の移住地域を探すための支援(レンタカー費用の補助や自治体の連携)などが受けられたりするそうです。
都市部への地方移住もアリ
地方移住をしたい人の多くは、都市部に興味をもっている
近年のデータで、面白いものが見つかりました。
「内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局」が令和2年2・3月に行ったアンケート調査によれば、東京圏在住者(20~59歳)の49.8%が、地方暮らしに関心があると答えたそうです。
また、国土交通省が発表している2017年度の国土交通白書では、三大都市圏に住む若者は4人に1人が地方移住に関心があることがわかったそうです。
一方、地方移住に関する相談・支援を行っている「ふるさと回帰支援センター」が行った「希望する地域類型」の2018年の調査では、「地方都市(市街地)」を希望する人の割合が74.4%でした。
この数字は農村の21.5%、山村の13.5%を大きく引き離しています。
参考:ふるさと回帰支援センターの調査結果(2019年2月19日リリース)
ちなみに、2016年にふるさと回帰支援センターが行った同調査では、地方都市(市街地)を希望すると答えた人の割合は49.9%、2017年は69.1%でした。
地方移住を具体的に考えている人の多くが、年を追うごとに、農村などよりも都市部への移住に興味をもつ人が増加していることが見えてきます。
そもそも地方都市って?
地方都市といっても、あまりピンとこない方もいるかもしれません。
国土交通省によれば、東京・関西・名古屋の三大都市以外を「地方」、三大都市圏以外が「地方圏」と定義されています。(2020年6月現在)
また地方都市は、以下のようにさらに細かく分けられていきます。
- 地方中枢都市:札幌市、仙台市、広島市、福岡市・北九州市
- 地方中核都市:地方圏(東京、関西、名古屋の三大都市圏以外の地域)における県庁所在市や人口がおおむね30万人以上の都市
- 地方中心都市・地方中小都市:地方圏における生活圏の中心で人口30万人未満の都市
とはいえ県庁所在地以外の「地方都市中心・地方中心都市」に分類されるところは、地域によってかなり発展度に違いがありますね。
いちおう、一般的には地方中心都市は10万人以上、地方中小都市は5万人程度と考えられているようです。
二段階移住のメリット2つ【地方移住で失敗しない】


地方都市の特徴をお伝えしたところで、つづいて二段階移住のメリットを2つ紹介します。
①:地方都市は生活しやすい
二段階移住のメリットのひとつは、地方都市では都会とそこまで大きなギャップを感じず、それでいて、都会とは異なる環境での生活を送れることです。
多くの人が抱える地方移住に関する不安は、「いきなり生活がガラッと変わって、なじめるかな」とか、「いざ住んでみたら気候や地域の雰囲気が合わないかも」などというものじゃないでしょうか。
もしかしたら「村八分みたいなことが起こるんじゃないか…」と思っている人もいるかもしれません。
しかし地方都市であれば、都会とそこまで生活を変えることなく地方移住の一歩を踏み出しやすいと思います。
私自身、長野県松本市という地方都市に移住してみて感じるのが、予想していたよりも不便さを感じないなということでした。
松本市とはいっても、自宅は松本駅前からは約3.5km、徒歩で30分ほどのところです。周囲は田畑が多いですが、そんなに隔離された感じもありません。駅前に行けばオフィスビルもあります。
東京のように、目と鼻の先にいくつものコンビニがあり、スーパーも歩いて5分みたいな利便性はありませんが、徒歩15分圏内で日常生活品の買い物ができるので十分許容範囲です。



30年間東京にいた割には、「東京にいたときはこうだったのに…!(イライラ)」みたいな変なギャップは、いまのところ感じずに済んでいます。
なお、東京で最後に住んでいた自治体(調布市)と松本市を比較してみると、面白いことが見えてきました。
長野県松本市 | 東京都調布市 | |
---|---|---|
総人口 | 238,257人 | 233,184人 |
世帯数 | 106,518世帯 | 118,657世帯 |
面積 | 978.47km2 | 21.58km2 |
人口密度(1km2あたり) | 245人 | 11,152人 |
上記の表の通り、総人口や世帯数では近しい規模の自治体間で地方移住を行いました。
ただ、色を付けたところを見比べていただくとわかるように、面積と人口密度には大きな差があります。これが東京とは異なるところで、解放感につながるのだろうなと感じています。
調布市は都内では郊外に分類されるものの、いま振り返ると、街のゴミゴミ感や住宅の密集度、時間の流れる速さはやっぱり東京だなという感じでした。
現在は、都会にいたときに近い利便性があり、それでいて環境のよいところで暮らせています。これは、移住のファーストステップとして、とてもよかったと思っています。



自分自身、ちょっとは山間部や過疎地での暮らしにも興味はありました。でも、いきなり農村や山村に移住してたら、ギャップがあり過ぎて楽しめなかったかもしれません…。
地方都市のなかで、自分の理想のライフスタイルに合う地域を選ぶことは十分可能でしょう。
②:時間をかけて、本当の自分の暮らしの理想を考えていける
二段階移住をするふたつめのメリットは、地方都市で暮らしながら、自分の(本当の)理想の暮らしをじっくりと考えられることです。
正直、都会に住んでいるときって、地方移住と聞いてもそこまでピンとこない人もいると思います。
もともと田舎暮らし経験があったり、中長期的に地方で生活してきた人でもない限り、本やテレビで見る田舎暮らしの姿に憧れても、自分がその環境でどう生活するのかまではリアルにイメージしづらいというか。
というわけで、本当にどの地方が自分にとってのベストな移住先なのか、移住前に見つけるのは非常に難しいのが現実です。
だからこそ、二段階移住で、まず気になる地方都市で生活してみる。そして地域の生活にどっぷり浸かりながら、都会以外での暮らしに少しずつ慣れていき、本当に自分に合った場所をゆっくりが見つかったら再び移住する。
そういうふうに、じっくりと自分にとってベストな地方移住を計画していくのも、アリだと思います。
地方移住は必ずしもうまくいくとは限らない


ここから、二段階移住がおすすめの理由を、もうちょっと深くお伝えします。
現実的なことを言うと、地方移住は、うまくいかない可能性も十分に起こりうると考えておいたほうがいいかと思います。
というのも、都会と田舎の生活は、まったく違うものになるからです。そして、田舎になればなるほど、都会との違いは大きくなります。
そのことをなかなか想像できていないと、地方移住後のギャップに苦しんでしまうようです。
ちょっと話は変わりますが、最近、テレビ番組や雑誌などでしばしば特集される地方移住者の生活拠点は、農村部や過疎地が目立つと思いませんか?
しかも「移住先の過疎地で起業して新しいビジネスを立ち上げた!」だったり、「地元の野菜を使った古民家カフェが大評判!」だったり、ものすごくキラキラした様子が目立ちます。
移住をするきっかけも、なんだか絵になるストーリーがあったりして。(そういう人を取り上げるほうが、企画を魅力的に見せやすいのだと思いますが)



人ごみやせまっ苦しさに疲れて、ただひたすら東京を離れたかった私には、そこまでのキラキラストーリーはないです(笑)
実際に地方移住をした人のなかには、キラキラした移住者の姿を見ているうちに憧ればかりが大きくなり、いざ自分が田舎へ移住して「思ったのと違った…」となる人もわりといるようです。
たとえば以下の本では、田舎暮らしの現実についてのネガティブ面も書かれています。私は現時点でリアルに味わっていませんが、地方在住のいま、たしかにそういう地域もあるだろうなと納得します。
私はテレビや雑誌などで活躍している移住者を眺めて「すごいなあ」と思う一方、どこかで「いや、現実はきっとこういう人ばかりじゃない…(もっと淡々と普通に生活している人もいるはず)」と、どこか冷静にもとらえています。
繰り返しになりますが、都会と田舎では生活スタイルが大きく違ってきます。
そもそも「慣れ親しんだ都会を離れること」自体が人生の大きな変化になりますので、どうしても農村部や過疎地じゃないとダメな理由がないのであれば、二段階移住で、まず地方での暮らしと自分の相性を確かめるのは、結果的に大きな満足につながるのではないかと考えています。
まとめ:地方移住を失敗したくない人に二段階移住はおすすめ


今回は、自分に合う暮らしを見つける地方移住の方法として「二段階移住」を紹介しました。
地方移住で失敗したくない想いは、誰しも同じだと思います。
でも、実際には「田舎の慣習が合わない」「思った以上に娯楽がなくてつまらない」など、いろいろな理由で移住をやめて、また都会に戻っていく人も少なくないようです。
それでもいい経験だったと前向きにとらえられればいいですが、せっかく大きな決断をするなら、最初から失敗しない方法を模索していくのも大事なことかなと。
二段階移住を選択したら、地方移住へのハードルもちょっと下がるのではないかと思います。
もちろん、「いきなり農村や過疎地でも絶対やっていける!」と自信がある人もいるでしょう。それならそれでOKです。
地方移住は、何よりも自分にとって心地よい場所を探していくのがベスト。これから地方移住する方にも、二段階移住も含めて、最も自分自身が幸せでいられる場所を見つけてもらえたらと思います。



この記事で、二段階移住のような地方移住の方法もあるのだなということが伝われば幸いです!