コラム

ポジティブシンキングがしんどいときに。気持ちを否定せず、視野を広げる「リフレーミング」の話

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こんにちは。
心とキャリアの伴走者として、自分らしい働き方・生き方づくりをお手伝いするカウンセラー、山﨑ももこです。

つらいこと、苦しい出来事があったとき、私たちはよく「ポジティブに考えよう!」などと言ったりします。

いつまでもクヨクヨしていたって仕方がない。
ネガティブでいるよりも、ポジティブでいたほうが気持ちも晴れる。

それはたしかに正論です。
でも、どうにも気持ちがついていかず、余計に落ち込んでしまう…そんな日もありますよね。

そう、ポジティブシンキングは、ときに自分の本当の気持ちにフタをし、余計な苦しさを生むこともあります。

そんなときに、選択肢のひとつとして知っておいてほしいのが、
自分の気持ちをちゃんと大事にしながら、物事の見方・捉え方を変える「リフレーミング」という考え方。

今回の記事では、ちょっと勘違いされやすいポジティブシンキングとリフレーミングの違いや、リフレーミングのやり方などをご紹介します。

この記事はこんな人におすすめです
  • 「前向きに考えなきゃ」と思うほど、気持ちがしんどくなってしまうことがある
  • ポジティブシンキングとリフレーミングの違いが、なんとなくわかりにくいと感じている
  • つらい出来事を無理に肯定せず、少しずつ気持ちを整理していきたいと思っている

ひとつの物事の見方・考え方として、参考にしてみていただけたら幸いです。

目次

ポジティブシンキングがしんどくなる瞬間

私たちは、つらい出来事、嫌なことがあったとき、
「クヨクヨしてたって仕方がない」「前向きに考えよう!」そんなポジティブなメッセージに励まされることがありますよね。

でも一方で、どうしても前向きになれない瞬間があるのも事実です。

頭では「いつまでも落ち込んでいても仕方ない」「考え方を変えたほうが楽だ」とわかっているのに、心がまったく追いつかない。

そんな状態で無理にポジティブになろうとすると、気持ちが置き去りにされたように感じたり、「まだ切り替えられない自分」を責めてしまったりしがちです。

前向きな言葉が、励ましではなく「プレッシャー」に変わってしまう。
ポジティブでいられない自分が、どんどんダメな人間のように思えてしまう…。

実は、こうしたときに必要なのは、気持ちを無理に前向きに変えることよりも、「別の見方があるかもしれない」と、少しだけ視野を広げてみること。

そのために役立つ考え方のひとつが、次に紹介するリフレーミングです。

リフレーミングとは?「物事の見方・捉え方」を変えていく考え方

リフレーミングとは、物事の「見方・捉え方」(枠組み、フレーム)を変えていくことを意味します。

そもそも物事の見方・捉え方というのは、一つだけではありません。
人によっても異なりますし、同じ人間でも複数の見方をすることもできます。

たとえば、何か挑戦してみたことがうまくいかなかったとき。
「失敗した…自分はなんてダメなんだ…」と落ち込む人もいれば、「失敗は苦しかった。でも、成長するための経験になったのかも」と受け取る人もいます。

これは、どちらが正しいという話ではなく、「捉え方が違う」ということです。

私たちは、捉え方がひとつしかない状態だと、どうしても気持ちが行き詰まってしまうことがあります。

リフレーミングは、そんなときに「今の見方だけが、すべてじゃないかもしれない」と、選択肢を増やしていくようなものです。

ここで大切なのは、自分の感情を無理に変えようとしないこと。

たとえば「つらい」「しんどい」と感じている気持ちをなかったことにしたり、気持ちを押し殺して前向きな言葉で上書きしたりする必要はありません。

リフレーミングは、自分のありのままの気持ちを否定せずに受け止めたうえで、「別の見方はできるかな」と、考え方の幅を持たせるための方法のようなものです。

ポジティブシンキングとリフレーミングの違い

ポジティブシンキングとリフレーミングは、どちらも「考え方」に関わるものですが、目指している方向や、気持ちとの向き合い方には違いがあります。

まずは、全体像を表で整理してみます。

ポジティブシンキングリフレーミング
基本の考え方前向きな考え方に切り替える出来事の捉え方の枠を見直す
感情への向き合い方感情よりも思考の切り替えを重視するネガティブな感情もそのまま扱う
しんどいときの使いやすさ心が追いつかないと負担になることも心の状態に合わせて使いやすい
目的気分を上向かせる視野を広げる
向いているタイミングある程度気持ちに余裕があるときまだ気持ちが整理できていないとき

ポジティブシンキングが力になる場面も、たしかにあります。
苦しい出来事のあと、少し元気が戻ってきたときや、気持ちを切り替えたいタイミングでは、前向きな言葉が背中を押してくれることもあるでしょう。

一方で、まだ気持ちが追いついていないときに無理に前向きになろうとすると「できない自分」を責めてしまったり、余計に苦しくなったりすることもあります。

そんなときには、気持ちの状態に合わせて、見方の選択肢を増やすリフレーミングが力を発揮しやすいです。

ポジティブシンキングもリフレーミングも、より柔軟に物事を捉えられるようになり、気持ちを楽にするための選択肢として持っておけるといいのかもしれません。

リフレーミングの具体例|見方が変わると、感じ方も変わる

リフレーミングは、日常の中でも気づかないうちによく行われているものです。

ここでは、同じ出来事でも「どう捉えるか」で、考えや気持ちがどう変わるかの例を見てみます。

挑戦して失敗したとき

うまくいかなかった事実は同じでも、その出来事を「自分の評価」と結びつけるかどうかで、感じ方は変わります。

リフレーミング前

  • 失敗した
  • やっぱり自分はダメだ
  • 向いていなかったんだと思う

リフレーミングの例

  • 今回はうまくいかなかった
  • 何が難しかったかはわかった
  • 経験として残った

人に断られたとき

断られたという出来事を、「自分が否定されたこと」と受け取るかどうかで、気持ちの重さは変わります。

リフレーミング前

  • 断られた
  • 否定された気がする
  • 価値がなかったのかもしれない

リフレーミングの例

  • 断られたのは事実
  • 相手にも事情やタイミングがあったのかもしれない
  • 自分が否定されたとは限らない

自分だけうまくやれていない気がするとき

他人との比較が強くなると、自分の状況を一方向からだけ見てしまいがちです。

リフレーミング前

  • 周りは進んでいる
  • 自分だけ遅れている
  • ちゃんとできていない

リフレーミングの例

  • 人によってペースは違う
  • いまは模索している段階
  • 止まっているわけではない

自分の弱点を強みにすることもできる

リフレーミングは、出来事だけでなく、自分自身の捉え方を見直すときにも使える考え方です。

たとえば、些細なことが気になって心配しすぎてしまう自分を、「気にしすぎ」「弱い」と感じていたとします。

でも見方を変えると、それは「細かいところに目が向くこと」や、「慎重に物事を考えられる力」でもあります。

また、人に気を遣いすぎて疲れてしまう自分を「流されやすい」「自分がない」と責めていたとしても、
「相手の立場を想像できたり、場の空気を読めたりする側面」もあるかもしれません。

どちらも、無理に「強みだ」と言い切る必要はありません。

ただ、これまで自分を責める材料にしていた見方が、唯一の見方ではないかもしれないと気づけるだけでも、気持ちは少し楽になることがあります。

リフレーミングのやり方|今日からできる小さなステップ

リフレーミングはコツを掴むと、少しずつ慣れていく人が多いです。

ここでは、無理なくリフレーミングしやすくなるための小さなステップを紹介しますね。

STEP
いまの捉え方を書き出してみる

まずは、「自分はいま、どう捉えているんだろう?」というところから始めます。

頭の中で考えるだけだと、同じ考えがぐるぐる回ってしまうことも多いので、
紙やスマホのメモに思っていることをそのまま書き出してみるのがおすすめです。

きれいな言葉にしたり、丁寧にまとめたりしたりしなくて大丈夫。
「ムカつく」「つらい」「もう嫌だ」
そんな言葉でも構いません。

STEP
事実と解釈を分けてみる

次に、書き出した内容を眺めながら、
「これは事実かな?それとも解釈かな?」と分けてみます。

たとえば、「上司に注意された」というのは事実。「私はダメな人間だ」は解釈です。

この二つを分けて考えると、出来事と自分自身を、少し距離を置いて見ることができます。

STEP
「別の見方があるとしたら?」と問いかけてみる

最後に、心の中でこんなふうに考えてみてください。

「別の見方があるとしたら、どんなものがあるだろう?」

このとき大事なのは、今の見方が間違っているかどうかを考えないことです。
また、無理に前向きな答えを出す必要もありません。

あくまでも、今とは別の見方をするとしたらどうなるだろう?と考えてみる。
それが、新しい捉え方に気づき、視野を広げるきっかけになります。

「前向きにならなければ」のプレッシャーから離れてみる

ここまで、ポジティブシンキングとリフレーミングの違いや、リフレーミングの考え方についてお話してきました。

あらためてお伝えしたいのは、どちらかを選ばなければいけないわけではないということです。

ポジティブに考えられるときは、その力を借りてもいい。
でも、どうしても前向きになれない時期があっても、それは人間として自然なことです。

リフレーミングが役立つ場面もありますが、
「いつでも使えるようにならなきゃいけない」「できない自分はダメ」と思う必要はありません。

実際、いくらリフレーミングしようとしても、つらい出来事の意味がすぐに見つかることもあれば、ずっとわからないままのこともあります。

時間が経ってから、「あの経験があったから今がある」と感じることもあれば、いつまでもそう感じられないこともあるでしょう。

視野が広がるタイミングは人それぞれですし、新しい見方をするのもエネルギーを使います。
ですから、疲れているときは無理に変わろうとしなくてOKです。

捉え方を変えてみることは、自分を急かすためのものではなく、少し楽に生きるためのもの

リフレーミングは、そのためのひとつの選択肢として、心の片隅に置いておいてもらえたらと思います。

「考え方を変えなきゃ」と感じている方へ

つらいこと、苦しいことがあったとき、
「もっとポジティブになりたい」
「どうしても気持ちが追いつかない」
そんなふうに感じることもあるかもしれません。

考え方や気持ちは、一人で整理しようとすると、同じところを行き来してしまうことも多いものです。

もしあなたが今、

  • 前向きになれない自分を責めてしまう
  • 頭ではわかっているのに、気持ちが整理できない

そうやって苦しくなっていたら、遠慮なくご相談いただけたらと思います。

私のカウンセリングでは、「どう考えればいいか」の前に、いま何が起きていて、
どこで苦しくなっているのかを一緒に考えていきます。

前向きになることをゴールにせず、あなたのペースで、少しずつ視野を広げていく。
そのきっかけづくりをお手伝いします。

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