「本当はこう思っているのに、うまく言えない…」
「伝えたつもりなのに、なぜか誤解されてしまう…」
人間関係の中で、こんなふうに悩んだことはありませんか?
本音を伝えることは大切だけれど、言い方によっては相手を傷つけたり、関係がギクシャクしてしまうこともありますよね。
そんなときに役立つのが、「アサーション」というコミュニケーションの考え方です。
アサーションとは、「自分も大切にしながら、相手の気持ちも尊重する伝え方」のこと。
攻撃的でもなく、受け身でもなく、適切な表現で気持ちを伝えることで、お互いに心地よい関係を築くことができます。
このコラムでは、アサーションの基本や、実際に使える伝え方のコツをわかりやすく解説していきます。
- 「言いたいことをうまく伝えられない…」と悩んでいる
- 本音を伝えるときに「相手を傷つけないか不安」と感じる
- 人間関係のストレスを減らして、もっとラクにコミュニケーションを取りたい
「伝え方」を少し工夫するだけで、人間関係は大きく変わることもめずらしくありません。
ぜひ、コミュニケーションに悩んでいる方は、今回の記事を最後まで読んでみてくださいね。
アサーションとは?
「本音を伝えたいけど、うまく言えない…」そんなふうに感じたことはありませんか?
相手を傷つけず、かといって自分を押さえ込むこともなく、気持ちを伝える方法があったらいいですよね。
それを叶えるのが、「アサーション(アサーティブ・コミュニケーション)」です。
アサーションの概要
アサーションとは、自分の気持ちを大切にしながら、相手の気持ちも尊重するコミュニケーションの方法のこと。
よく混同されるのが「アサーティブ」 という言葉ですが、これは「適切に自己主張すること」を意味します。
つまり、「アサーティブな態度(自己主張の仕方)」を実践するための具体的な方法が、アサーション」なのです。
たとえば、何かをお願いしたいときや、意見を伝えたいときの違いはこんな感じ。
コミュニケーションの種類 | 伝え方の例 | 特徴 |
---|---|---|
攻撃的(アグレッシブ) | 「これ、今すぐやってよ!」 | 自分の意見を押し通し、相手の気持ちは無視 |
受け身(パッシブ) | 「私はいいから、あなたの好きにして…」 | 自分の気持ちを押さえ込み、相手に合わせる |
アサーティブ(アサーション) | 「私はこう思うんだけど、あなたはどう?」 | 自分の気持ちを正直に伝えつつ、相手の意見も尊重する |
このように、アサーションは 「自分も相手も大切にする」ことを前提にした伝え方なのです。
アサーションのメリット
アサーションを実践することで、以下のようなメリットがあります。
✅ 自分の気持ちを正直に伝えられる
「言いたいことを我慢する」「後からモヤモヤする」ことが減り、ストレスが軽くなる。
✅ 人間関係がスムーズになる
相手の気持ちも大切にすることで、無駄な衝突を避け、信頼関係が築きやすくなる。
✅ 自己肯定感が高まる
「ちゃんと伝えられた!」という成功体験を積むことで、自分の気持ちを大切にする意識が育つ。
✅ 相手の意見も受け入れやすくなる
一方的に主張するのではなく、相手の考えにも耳を傾けることで、柔軟なコミュニケーションができる。
日常のちょっとした場面からアサーションを取り入れることで、自分も相手も大切にできる、心地よいコミュニケーションが実現できます。
本音を優しく伝えるための「アサーション」のコツ
本音を伝えることは、決してわがままではありません。
大切なのは、「どう伝えるか」。
ここでは、相手を尊重しながら自分の気持ちをしっかり伝えるためのアサーションの具体的なコツを紹介します!
コツ①DESC法を使ってみよう
アサーションには、具体的な伝え方のフレームワークがあります。
それが「DESC法(デスク法)」です。
これは、自分の気持ちを整理しながら、相手にわかりやすく伝えるための方法。
4つのステップに分かれているので、順番に見ていきましょう。
① D(Describe):状況を客観的に説明する
まずは、感情を入れずに、事実だけを伝えることがポイント。
相手を責めるのではなく、「何が起こっているのか」を冷静に説明します。
例:「最近、LINEを送ってもすぐに返事がこないことが多いよね。」
② E(Express):自分の気持ちを伝える
次に、その状況に対して自分がどう感じているかを伝えます。
このとき、「あなたのせいで!」と責めるのではなく、素直な気持ちを伝えるのが大事。
例:「返事がないと、ちょっと不安になっちゃうんだ。」
③ S(Specify):どうしたいかを提案する
「こうしてほしいな」と、具体的な提案をします。
ここで大事なのは、「命令」ではなく「お願い」にすること。
例:「忙しいのはわかるけど、○日以内に返信してくれたら安心できるな。」
④ C(Choose):相手の反応に応じた対応を考える
相手の返答によって、どう対応するかを考えます。
「絶対にこうして!」ではなく、お互いにとってよい着地点を探るイメージです。
例:「もしそれが難しければ、一言だけでも『あとで返すね』って送ってもらえたら嬉しいな。」
このように、感情的にならずに、でも自分の気持ちは大切にしながら伝えることで、相手も受け入れやすくなり、気持ちのすれ違いを減らすことができます。
コツ②「あなたが悪い」ではなく「私はこう感じる」|「 I(アイ)メッセージ」の力
アサーションの伝え方でもう一つ大事なのが、「I(アイ)メッセージ」です。
これは、「あなたが○○だからダメなんだ!」ではなく、「私は○○と感じる」と伝える方法。
相手を責めるのではなく、自分の気持ちを主語にすることで、素直な気持ちを伝えやすくなります。
たとえば…
❌ 「あなたっていつも遅刻するよね!時間にルーズすぎるよ!」 → 責められた相手は反発しやすい
これをIメッセージに変えると…
💡 「約束の時間を過ぎても来ないと、私は心配になっちゃうんだ。」 → 受け入れやすくなる
ちょっとした言葉の選び方を変えるだけで、伝わり方は大きく変わります。
私たちは、「相手にわかってほしい!」という気持ちが強いほど、つい攻撃的な言葉を使ってしまいがち。
でも、「どう伝えれば、相手に届きやすいかな?」と意識すると、コミュニケーションはもっとスムーズになります。
アサーションは日常でどう活用する?実践例と例文
本音を伝える大切さはわかっていても、「実際にどう言えばいいの?」と悩むこともあるでしょう。
ここでは、職場や夫婦関係など、日常のさまざまな場面で使えるアサーションの具体例を紹介します。
職場でのアサーション:「上司や同僚との人間関係を円滑にするには?」
職場では、上司や同僚との関係を気にして、本音を言えずに我慢してしまうことがありますよね。
でも、伝え方を工夫すれば、関係を損なうことなく自分の意見を伝えることができます。
例:仕事の依頼が多すぎるとき
「忙しいですけど…まあ、何とかやります…」
「こんなに押し付けられては困ります!もう無理です!」
⭕️ アサーションの例(DESC法を活用)
「今、別の案件の締め切りが迫っていて、すぐに対応するのが難しいです。(D:状況を説明)
正直、仕事が立て込んでいて少し焦っています。(E:自分の気持ち)
もし納期を調整できるなら、優先順位を相談させてもらえませんか?(S:提案)
どのタスクを優先するべきか、一緒に決められると助かります。(C:相手の反応に応じた対応)」
こう伝えれば、ただ「無理」と突っぱねるのではなく、 「どうすれば解決できるか」を一緒に考える姿勢になります。
夫婦関係でのアサーション:「些細なことで衝突しないための伝え方」
夫婦間では、相手への遠慮や慣れから、「言わなくてもわかるはず」と思い込んでしまうことがあります。
でも、ちゃんと言葉にしなければ、すれ違いの原因に…。
例:パートナーが家事を手伝ってくれないとき
(不機嫌な態度をとるだけで何も言わない)
「なんでいつも私ばっかり家事してるの!?少しは手伝ってよ!」
⭕️ アサーションの例(I(アイ)メッセージを活用)
「最近、家事の負担が多くて少し大変に感じてるんだ。(Iメッセージで自分の気持ちを伝える)
一緒に家事の分担を考えられたらうれしいんだけど、どう思う?」
「あなたがやらないから」と責めるのではなく、 「私はこう感じている」と伝えた上で、相手の意見も尊重することがポイントです。
アサーションは、友人関係や親子関係、恋人との関係など、どんな人間関係でも活用できます。
まずは、身近な場面で少しずつ実践してみることから始めてみませんか?
アサーションを取り入れて、自分も相手も大切にするコミュニケーションを
「ちゃんと伝えたほうがいい」とわかっていても、不安になったり、勇気が出なかったりすることもありますよね。
でも、本音を伝えることは、決して悪いことではありません。そのときに大切なのは、今回ご紹介したように、自分も相手も大切にする姿勢です。
アサーションを少しずつ意識していくことで、自分の気持ちを大切にしながら、相手との関係も少しずつ変わっていくかもしれません。
いきなり完璧にできなくても大丈夫。ほんの小さな一歩から、自分の思いを伝える練習を始めてみませんか?
もし、「自分の気持ちがうまく整理できない」「どう伝えたらいいのか迷ってしまう」…そんなふうに感じるときは、カウンセリングの中で一緒に考えたり、練習したりすることもできます。
コミュニケーションがほんの少しスムーズになるだけで、「生きやすさ」がぐっと変わることもあります。
あなたに合った伝え方を見つけながら、心地よい人間関係を育んでいけるといいですね。