コラム

言葉にできない気持ちは、語彙力だけでは解決しない。「自分の内側に降りる」ことから始める言語化の話

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こんにちは。
心と働き方のカウンセラー、山﨑ももこです。

フリーランス14年の経験と、心理学・カウンセリングの学びをもとに、心とキャリアの両面から自分らしい働き方・生き方をつくるお手伝いをしています。

ここ数年、ビジネス現場を中心に「言語化」「言語化力」という言葉をよく聞くようになりました。

語彙を増やしたり、文章術の本を読んだりしている方も少なくないようです。

でも、語彙力を高めても、文章の型を学んでも、「なんだかうまく言えない」「自分の本音がつかめない」と感じることはありませんか?

私はこれまで、ライターやインタビュアーとして約14年、多くの方のお話を聴き、言葉にする仕事を続けてきました。

また、今はカウンセラーとして「自分の気持ちはなんとなくあるけど、うまく言葉にできなくて…」と悩まれている方にたくさん出会います。

「どうしたら言語化力が高まりますか?」と直接的な質問を受けることもしばしばあり、私自身がこの問いをずっと考えてきました。

私なりの結論を先に言うと、言語化は語彙力や文章術だけの問題ではありません。

むしろ、自分の感情や思考とどれだけ向き合えているかが大きく関係していると思っています。

この記事では、ライターでありカウンセラーでもある私の視点から、「言語化」についてお話ししてみようと思います。

目次

世の中で語られる「言語化」と、私が感じている言語化の世界

まずは、いま世の中で「言語化」という言葉がどのように使われ、どんな意味を持っているのか。

そして私が感じている、ちょっと違う角度からの言語化について整理してみます。

いま注目される「言語化」の多くは外に向かうスキル

いま世の中で語られている「言語化」の多くは、次のような視点が中心です。

  • 仕事でわかりやすく説明する(ロジカルシンキング、PREP法など)
  • プレゼンや発信で相手に伝える(伝え方の技術、スピーチ術など)
  • 語彙を増やして表現を豊かにする(言い換え力、ボキャブラリートレーニングなど)

つまり、「外に向けてどう伝えるか」というアウトプットのスキルに焦点が当たることが多いです。

もしかしたら、この記事を読んでくれている方も、こうした目的で「言語化」に関心をお持ちかもしれません。

私自身、「相手に伝わるような言葉を使う」仕事を長くしてきましたし、これらの技術の重要性はよくわかります。

でも、それだけでは説明しきれない言語化の世界

ただ、言語化の土台には、もう一つ見落とされがちな側面があると感じています。

それが「どこまで自分の内側に降りていくか」という部分です。

言い換えると、自分が何を感じていて、何を考えているのかを、自分で理解していくこと。

私はこれを密かに「内向きの言語化」と呼んでいます。
私自身、ライターとしてもカウンセラーとしても、この力こそが言語化の土台だと感じています。

一方で、相手にわかりやすく伝えるための技術は「外向きの言語化」です。

世の中では後者が多く語られますが、前者が土台になっていることも少なくありません。

「型通りには話せるようになったけれど、なんだか自分の言葉じゃない気がする」

そんな感覚の背景には、内側の言葉がまだ整理されていないこともあります。

では、この「内向きの言語化」とは具体的にどんなものなのでしょうか。

「内向きの言語化」とは、心の解像度を高めるということ

自分が感じていることや思うことを深く探っていく「内向きの言語化」、私はこれを「心の解像度を高めること」だと捉えています。

どういうことか、例を挙げながら説明していきたいと思います。

「楽しい」「しんどい」で思考停止していませんか?

デジタルカメラで撮った写真を思い浮かべてみてください。

解像度が低い写真は、拡大するとぼやけて、細部がよく見えません。
一方、解像度が高い写真は細かいところまで鮮明で、その場の空気感や臨場感まで伝わってきます。

私たちの感情と言葉の関係も、これによく似ています。

日常の中で、私たちはつい「便利で簡単な言葉」で感情をひとくくりにしがちです。

「昨日の会議、しんどかった」
「今日はなんだか、いい一日だった」
「なんかモヤモヤする」

こうしたふんわりした言葉は使いやすく、会話のテンポも良くなります。

曖昧な感情を、そのまま曖昧に伝えることで、コミュニケーションが無理なく成り立つ場面も多々あるでしょう。

ですが、曖昧な言葉を使うデメリットもあります。

それは、自分の内側にある感情のリアリティを捉えるには、少し解像度が粗すぎることです。

たとえば「しんどい」一つをとっても、その中身は人や状況によってまったく違ってきます。

  • 体力的に限界で、とにかく休みたい「しんどさ」
  • 自分の意見を言えずに我慢していた「しんどさ」
  • 頑張りが認められなくて、心が折れそうな「しんどさ」
  • 誰にもわかってもらえない孤独感が混ざった「しんどさ」

質感や重みは千差万別なのに、とりあえず「しんどい」というラベルを貼って終わりにする。

そうすると、私たちはそれ以上、自分の「しんどさ」について深く考えるのをやめてしまいます。

これは心の解像度が低い状態、つまり内向きの言語化が十分にはできていない状態です。

なぜ、私たちは「便利で簡単な言葉」で止まってしまうのか

私たちが便利で簡単な言葉で止まってしまうのは、スピードを求められる社会の影響もあるでしょう。

特にビジネスでは「結論から言え」「端的に説明しろ」と求められ、無駄を省くことが求められる場面も多いです。

結論を急ぐ場では、感情の深さや物事の複雑さをじっくり味わう時間はなかなかとれません。

「効率化重視」の現代社会で生きるうちに、自分の内面に向き合うこと――しっかりと感じたり、考えたりすること自体が時間の無駄だ、と感じる人も少なからずいるように思います。

ただ、もうひとつ、本音に触れることへの無意識の回避もあるかもしれません。

私たちは、感情をしっかり味わおうとすると、普段はあまり表に出さないようにしていた自分の姿に出会うことがあります。

「しんどい」の奥に隠された、実は誰にも言えない悲しみや孤独感…そういったものに向き合うのは、それなりのエネルギーを要します。

だから、「なんとなくわかった」で留めておいたほうが無理がない場面もある、というのも確かです。

心の解像度が低いまま外に向かうと、何が起きるのか

私は「なにがなんでも内側に向き合い続けなきゃ!」と言いたいわけではありません。

それでも、自分の心に向き合うことは、自分らしく生きるための大切な作業だと思っています。

心の解像度が低いままアウトプットだけやっていると、言葉だけ整っていても自分の実感が伴わない状態になりやすいからです。

表現力やプレゼンスキルを磨いても、自分の内側がよくわかっていなければ、言葉はどこか「借り物」のまま。

内向きの言語化があってこそ、外向きの言語化スキルが本当に生きてきます。

たとえば、転職の面接で「なぜこの会社を志望したんですか?」と聞かれたとき。

自分でも腑に落ちていないまま、「御社の理念に魅力を感じ…」といった一般論を並べる。

文章としては整っていても、自分の内側から本当に出ていない言葉は、どこか他人事のように聞こえてしまいます。

それでは説得力も弱いですし、自分自身も「本当にこれが言いたかったんだっけ?」というモヤっとした感覚が残るでしょう。

自分で自分の気持ちや思いを、おおざっぱにしかとらえていない。

その状態を長く続けていると、「自分らしい生き方」には、どうしても近づきにくくなってしまうと、私は思っています。

心の解像度はどうやって高めていけばいい?

私がこれまで多くの方のお話を聴いてきて感じるのは、話が上手だとか苦手だとかに関わらず、「自分の言葉で語る人は、自分の内側を丁寧に見つめている=心の解像度が高い」ということです。

では、どうすれば心の解像度を高めていけるのでしょうか。

ここではいくつかの考え方を紹介します。

複雑な気持ちを「じっくり味わう」時間をつくる

まず大切なのは、自分の感情に、少し長めにとどまってみる時間をつくることです。

モヤッとしたとき、ザワザワしたとき。
つい私たちは気持ちをそらしたり、「まあいっか」と流してしまいがちです。

それ自体が悪いわけではありませんが、いつもそれだけで終わってしまうと、心の解像度はなかなか上がっていきません。

おすすめなのは、1日のどこかで、あるいは本当に複雑な気持ちになったときには、少し時間をとって「あのとき、私は何を感じていたんだろう?」と、静かに考えてみることです。

「どの瞬間が一番しんどかった?」
「そのとき、体のどこがどんな感じがしていた?」
「そのしんどさの奥に、どんな思いが隠れていそう?」

すぐに言葉にならなくても、「うーん、よくわからないなあ…」と思いながら、そのわからなさごと味わってみる。

この「よくわからない」にとどまる時間が、実は心の解像度を上げるための、とても大切な訓練になります。

安易な言葉だけで終わらせず、もう一歩、踏み込んでみる

二つ目は、便利な言葉で済ませず、もう一歩だけ踏み込んでみることです。

いつも「楽しかった」「しんどかった」だけで止まってしまうと、解像度はなかなか上がりません。

だから、そう思ったときには「どんなふうに?」ともう一度自分に問いかけてみる。

この「もう一歩」が、言葉の解像度を大きく変えていきます。

ちなみに私がライターとしてインタビューをするとき、よく使っていたのもこの「どんなふうに?」という問いかけです。

たとえば、相手の方が「〇〇のようなことがあって、うれしかったんですよね」と答えたとき。

「どんなふうにうれしかったですか?」と聞いてみると、

「うーん…なんだか感動っていうのとはちょっと違うんですけど…胸がじわっと温かくなるような感じでした」

「その場では平静を装っていたけど、実は心の中ではめちゃめちゃテンション上がってました(笑)」

といった、その人ならではの表現が出てくることが多いです。

この問いかけを自分自身にしてみると、「私はどんなふうにうれしかったのか」、意外な面が見えてくることがあると思います。

また、「ヤバい」「エモい」といった単純で便利な言葉は、自分の繊細な感情を塗りつぶしてしまうことがあります。

つい簡単な言葉で終えがちな人は、「『ヤバい』を使わずに、この感動を言うなら?」と、ぜひ少し考えてみてください。

比喩や擬音、あるいは、なんとなくのイメージでもいい。
「こんな感じかな?」と試しに言葉にしてみる。

それだけで、自分の感情との距離が少しずつ近くなっていくはずです。

「うまく言えない自分」を、責めない

そしてもう一つ、とても大切だと思っていることがあります。

それは、「うまく言えない自分」を、必要以上に責めないことです。

言葉が思うように出せないとき、真面目な人ほど、「自分は言語化が下手だ」「考えが浅いのかもしれない」と、自分を否定する方向にいきがちです。

ですが、実は「うまく言えない」という感覚は、まだ言葉になりきれていない、いろいろな気持ちを秘めているサインでもあります。

ほんの数語でまとめてしまえるほど単純じゃないから、言葉にしづらい。
いろんな気持ちが入り混じっているから、「これ」と言い切れない。

それは自然なことであって、人間らしさでもあります。

だから、「今は、まだうまく言えないんだな」「でもちゃんと感じているものはありそうだな」と、自分の内側を信じながら、ゆっくり言葉を探していく。

この「否定せずにそのまま認めておく」というスタンスも、心の解像度を高めていくうえで大切な土台になります。

一人で深めるのが難しいとき、対話で見つけられる言語化の力

ここまで、心の解像度を高めるためのヒントをお話ししてきました。

でも正直に言うと、これを一人でやり続けるのは決して簡単ではないと思っています。

複雑な気持ちをじっくり味わったり、「便利な言葉」で済ませずにもう一段深く感じたりすることは、どこか面倒くさいし、なんだかしんどいときもあります。

だから、多くの人は日常の中で「自分の内面と向き合うこと」を、つい後回しにしてしまうのだと思います。

スマホを見ていた方が楽だし、「まあ、なんとなくでいいか」と、いつもの便利な言葉で片付けてしまう。

これは、現代に生きる私たちにとって、仕方のないことでもあるのでしょう。

ただ、私自身、多くの方のお話を聴いていて感じることがあります。

それが、対話の不思議な効果――人は、誰かとの対話の中にいるときに、自分でも気づいていなかった言葉に出会いやすくなるということ。

最後に、そのことを少しお話ししたいと思います。

対話は、言語化の最強のトレーニング

不思議なもので、一人でうんうん考えているときには思いもつかなかった言葉が、誰かと話す中でふっと出てくることがあります。

「うまく言えないんですけど…」と話し始めて、たどたどしく言葉を探しているうちに、「今の、ちょっとしっくりくる」という瞬間に出会う。

これは、対話相手がいることで「ちゃんとまとめなきゃ」という緊張が緩み、自然に感情の深いところまで降りていけるからです。

また、相手が適切なあいづちや問いかけをしてくれると、「そういえば…」と新しい気づきが出てきたり、自分では気づけなかった視点が開けたりすることもあります。

私自身、インタビューをしているときに、「話していて、こういうことだったんだなとわかりました」と言われることが何度もありました。

カウンセラーとしてお話を聴くときにも、相談者さんが「今、自分で話していて気づきました」「その言葉が一番しっくりきます」とおっしゃる瞬間に、よく出会います。

対話には、自分の内側を自然に探り、普段は気づけない気持ちにまで気づきやすくなる力があるのです。

言語化は、自分らしく生きるための土台になる

言語化力が高まると、仕事や人間関係、さらには自分自身との関係でも変化が起きます。

自分の考えを的確に伝えられるようになる。
「本当はどうしたいのか」が見え、選択に迷いにくくなる。
相手の言葉の奥にある感情にも気づきやすくなる。

たとえば「働き方」でいうと…

「会社を辞めたいのか、仕事の内容を変えたいのか」
「フリーランスになりたいのか、今の会社での自由度を上げたいのか」

ここが自分の中でごちゃっとしていると、「なんとなく辞めたい」「なんとなく自由な働き方に憧れる」といったレベルで迷いが生じていきます。

そして、そのままだと頭の中がモヤモヤとした迷いにとりつかれて苦しさも増してしまいます。

一方で、「本当は◯◯がつらい」「本当は△△を大事にしたい」と自分の言葉で具体的に言えるようになってくると、

「じゃあ今の職場でできる工夫は?」
「転職という選択肢は?」
「独立はいつ・どんな形なら現実的か?」

といった選択も考えやすくなっていきます。

つまり、言語化は単なるスキルではなく、「自分らしく生きるための基盤」でもあるのです。

だから私は普段のセッションで、この「内向きの言語化」を大切にしています。

相談に来られる方の多くは、最初からはっきりと答えを持っているわけではありません。

むしろ、

「何に悩んでいるのか、自分でもよくわからない」
「頭の中がごちゃごちゃしていて整理できない」
「なんとなく苦しいけれど、理由が言葉にならない」

そんな状態で来られることも少なくありません。

対話を重ねながら、自分の気持ちや価値観を少しずつ見つけていく。

その結果として、「本当はどう働きたいのか」「どんな生き方を大切にしたいのか」が見えてくることもあります。

自分の気持ちをうまく言葉にできず、モヤモヤしている。
一人で考えていても、なかなか整理がつかない。

そんなときには、ぜひ対話の力を試してみていただけたらと思います。

言葉にならない感覚や気持ちも大切にしながら、一緒に「あなただけの言葉」を見つけていけたらと思います。

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